サテンバー、東京

東京・赤坂の地下に佇む「Satin Bar」は、リッチな質感のレイヤーやアール・デコに着想を得たアート、そして現代日本のクラフトを取り入れることで、1920年代の華やかな気配を纏っています。

プロジェクト概要

東京・赤坂の賑やかな街並みにひっそりと佇む「Satin Bar」は、クラシックなアール・デコの隠れ家的バーを現代的に再解釈したバーです。地下にひっそりと構えるその佇まいは、特別感と静かな洗練を醸し出し、人とつながる時間にも、日常から逃れるひとときにも寄り添う、都会の隠れ家としてデザインされています。

バーの中心に据えられているのは、再利用された建築要素――空間の焦点となる印象的な黄金のアーチです。特注の和紙で覆われたそのアーチは、アール・デコの貝殻モチーフに見られる幾何学的な優美さを想起させつつ、さりげなく東京の象徴であるイチョウの葉を思わせます。この異文化の融合は素材そのものに宿されており、地元の和紙工房「Wajue」との協働によって生み出されました。Wajue は黄金の仕上げに求められる正確な色合い、奥行き、そして透過性を丹念に追求し、素材に命を吹き込んでいます。

メインバーは、抑制の効いたモノクロのパレットで構成され、メタリックな仕上げがアクセントとなり、空間に静かな贅沢さを添えています。「Satin」は、その名の通り深みのあるムーディーな素材感を纏い、室内の官能的な体験を一層引き立てます。天井にはテクスチャー入りの鏡面メタリックパネルを配し、光を反射させることで地下空間に広がりと明るさをもたらしています。全長11メートルのバーカウンターは、日本の伝統的なタイル工芸の中心地である多治見から取り寄せた深い黒のタイルで覆われています。

バーの直線的なレイアウトは、プライベートラウンジであるブルールームへと続きます。隠し扉の向こうに広がるこの親密な空間は、メインバーとは対照的に、鮮やかなエレクトリックブルーを基調とした大胆な配色で構成され、テクスチャー豊かなファブリックや幾何学的な真鍮のアクセントが重ねられています。

バスルームでもモノクロのテーマは継続され、幾何学模様の壁紙や重厚な真鍮のディテールがアクセントとなっています。特注の壁一面の鏡は、1970年代のアール・デコの再現デザインの思想を取り入れ、ハリウッドのきらびやかさと角ばったモチーフを融合。コンパクトな空間に奥行きと劇的な演出を生み出しています。

写真: 橋原大典

施工会社 : AICS
家具: ザ・ヴィンテージハウス

曲線的なカウンター、バースツール、照明付きのバックシェルフ(酒瓶とグラスが並ぶ)、豪華な座席を備えたラウンジエリアがある、薄暗い照明の空のバー。
模様入りの枕が置かれた小さな曲線状の紫色のベルベットのブース、丸い黒いテーブル、模様入りの壁紙が貼られた青い壁、薄暗い部屋の壁に取り付けられたテレビ。
幾何学模様の壁紙とモザイクタイルの壁、シンク付きの黒い洗面化粧台、モダンなトイレ、丸い電球が付いた大きな鏡、白黒の市松模様の大理石の床、天井の通気口、暗い天井がある小さなバスルーム。
長い木製のカウンター、緑と金の装飾的な壁パネル、ボトルやグラスが並んだガラス棚があり、柔らかな照明で照らされたスタイリッシュなバー。
赤い壁、吊り下げられた球形のペンダントライト、幾何学的な木製の仕切りがあるモダンな廊下の内観。